写真★★、文章★★★★
宮嶋の文章はいつものように生き生きと、チェチェンのおばちゃんの姿を、生き物の見受けられない、完全に制圧されたグロズヌイの町の様子を想起させる。もはや、ページの合間に挿入された写真は、そうやって想起させられたイメージを補完するものでしかない。もちろん、カラーで、そして適正なサイズで見れば、宮嶋の写真は彼のテキストよりも雄弁に、なにかを語るのかもしれないが。それにしても文庫版のサブタイトルにあるチェチェンでの目撃談はものすごい。テロを正当化するわけではないが、これだけのことをされたら自爆テロもするよな、というか、もはやチェチェン人としてなにか訴えるとしたら、その方法しか残されていないよな、と、彼らのテロの理由が腑に落ちる。 ところで、宮嶋のテキストは、本人が望んでキナ臭い場所に行っているという興奮もあるのだろう、キツい状況が描かれていても、常に笑いがある。戦場カメラマンとして、その笑いにはシニカルなものが多いが、そういうキツい、ときにはまさに死と隣り合わせの状況を振り返って書くときに、そこに笑いが漂うのは、人間にしかない反応だろう。 この、緊急事態を書き起こすに当たって、笑いとセットで文字化するという宮嶋の人間臭さが、写真よりも一層、事態をまざまざと読む者のうちに再現するのかもしれない。 しかしそれは写真家としてどうなのだろう。この、テキストによって彼が的確に伝えてくるものが、写真に込められ、放射されていれば、本人が時々コボすピュリッツァー賞もそれこそ夢ではないのでは? そろそろ、本人のキャプションなしで一冊丸々、魅せてほしい。
文藝春秋
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